現預金はどれくらい持っておくべき? (通信No.15)
では、前回の続きで表をみてみましょう。
11月は、月末預金残高がマイナスになっています。
ということは、この月には何らかの手を打たないと、資金ショートするということです。
月末預金残高がマイナスになっていなくても、安心はできません。
入金より支払のほうが早い場合には、月中に資金ショートすることもあり得ます。
安心できるのは、月初預金残高が、その月の予定支払総額より大きい月だけです。
つまり、その月にまったく入金がなくなったとしても、支払いは予定通りに行える。
このような月だけが、安心してやっていけるということです。
そうではなく、月の前半の入金をあてにして、月の後半に支払いを行う。
この状態だと、何らかの事情で前半の入金がなくなると、資金ショートしてしまいます。
そう、この状態は、いわゆる自転車操業になっているということです。
これでは、安心して経営に取り組めなくなりますので、極力避けなければなりません。
ということで、少なくとも、一番支払いが多い月1ヶ月分くらいは持っておきたいところです。
で、多いほうはどうでしょうか。どこまで持っておけばよいのでしょうか。
答は、「将来への投資を全て終えて、その上で多ければ多いほどよい」ということになります。
具体的な一つの目安としては、月商の2.5~3ヶ月分をお勧めしたいと思います。
なぜなら、なんらかの要因で売上がガクッと落ち、その対応策をとったとします。
その対応策が効果を発揮してくるのが、たいていの場合、3ヶ月だからです。
我々中小企業は、とにかくいつもリスクをなくすということを考えなければなりません。
月商3ヶ月分の現預金があれば、かなりの不確実性に対応できるわけです。
ただ、いまの経済環境では、月商1ヶ月分の現預金も持てない、という会社の方が多いでしょう。
そういう場合には、まずは月商1ヶ月分、自転車操業脱出を目指して下さい。
常盤のひとりごと
経営のご相談を受け、決算書を拝見して、「もっと早く、誰かが、本当の状況をハッキリと説明してあげていたらなぁ」と思うことがよくある。
人間、誰しも人には良いことを言ってあげたい。会社が儲かって、「社長、素晴らしいですね。」と言ってあげられれば、そりゃどちらも気分がよい。
が、そんなときには我々は必要ない。我々の出番は、社長が数字から目をそらしたくなるときである。その気持ちを十分知りつつも、本当に会社と社長のためを思えば、事実を突きつけざるを得ない。
正直、我々会計事務所というのは損な役回りだなぁと思うこの頃である。